ひと昔前なら、離婚すること自体が罪悪であるような社会的評価を受けることもありましたが、現代では既婚者の3分の1は離婚していると言われます。これは、矛盾を抱えた夫婦関係の維持よりお互いの幸福のための発展的解消を望むという結婚観・離婚観の変化の影響もあるでしょうが、夫婦間のコミュニケーションの欠如や家庭内暴力(DV)といった現代的問題の影響も軽視できません。離婚は、夫婦財産の分配や、離婚後の子どもの養育の問題など、夫婦関係の解消だけにとどまらず多くの問題を突きつけます。身近であるが故に誰にも相談できずに苦しまれている方も多いのではないでしょうか。親権問題や慰謝料、養育費や財産分与など離婚時に生じる様々な取り決めをご相談者の立場になって一緒に考え、解決いたします。
<離婚問題における法的な項目>
・調停離婚
夫婦間の話し合いによる「協議離婚」が成立しなかった場合、家庭裁判所に離婚の調停を申し立てることができます(調停離婚)。離婚調停の申立ては、申立書に申立ての趣旨と申立ての実情を記載し、戸籍謄本を添付して、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。申立書の受理から数週間後、裁判所から双方に呼出状が届き、以後1か月に1回程度のペースで話し合いの席が持たれます。調停が成立した場合は、合意した内容を記載した調停調書を作成し、その時点で離婚が成立します。離婚届にはこの調書を添付して、役所に提出します。調停手続でも解決できず、それでもなお離婚を希望する場合は裁判所に離婚訴訟を提起するということになります。
・財産分与
夫婦の共同生活の間に築いた共同財産は、離婚に際して夫婦間で分け合わなければなりません。これを財産分与といいます。対象となるのは、現金、預金、不動産、有価証券、住宅ローン、退職金、保険金など多岐にわたります。分与の割合は原則として2分の1ずつとし、離婚後の扶養、慰謝料的側面も加味しながら妥当な割合を定めます。
財産分与は、当事者の協議で定めますが、協議がまとまらないときは調停、審判によることになります。財産価値の評価は専門的知識を要しますので、早い段階でご相談ください。なお、婚姻前に取得した財産や相続で取得した財産は分与の対象となりません。
・慰謝料
離婚の原因が不貞や暴力であった場合、離婚原因を作った配偶者に対し慰謝料を請求することができます。もっとも、どのような離婚原因についてどれだけの慰謝料が認められるかは一律に定まるものではなく、破綻原因、有責行為の種類態様、精神的苦痛の程度、婚姻期間の長短、年齢、性別、婚姻生活の実情、婚姻中の協力度、双方の収入の程度、未成熟児の有無、財産分与の額など、諸般の事情が勘案されます。
・年金分割
年金分割は、従来の年金制度で専業主婦だった方にかかる不合理を解消するために創設された制度で、一定条件の下で、婚姻期間中の厚生年金の標準報酬を離婚後も分割して受給できる制度です。もっとも、いつ離婚した人が対象となるか、分割の割合をどうするかなどの問題もありますのでご相談ください。
・親権者の指定
離婚の際には、父母のどちらが子どもを引き取るか、誰が親権者となるかで争いとなることが少なくありません。協議がまとまらないときは、家庭裁判所の判断に委ねることとなりますが、いずれの親のほうが子どもの成長に適した環境があるかなどの観点から詳細な調査を経て決定されます。従来は「母性優先の原則」から母親に親権が認められる場合が多かったですが、最近では、父親に親権が認められるケースも増えてきています。
・養育費
厚生労働省の令和3年度ひとり親世帯等調査結果報告によると、離婚した夫婦で母子世帯の場合で養育費の取り決めをしているのは46.7%程度、父子世帯の場合で28.3%となっています。しかも離婚した父親から子が養育費を受給し続けている子どもは28.1%、離婚した母親から子が養育費を受給し続けている子どもは8.7%となっています。養育費を受ける権利は子どもの正当な権利です。離婚時に養育費の取り決めを交わすことはもちろん、支払われるべき養育費を確保するための手段である強制執行など、弁護士が適切な対応をアドバイスし、子どもの健全な成長を擁護します。
・DV(離婚)
DV(ドメスティック・バイオレンス、配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力)とは、物理的な暴力だけでなく、人格を否定する暴言・交友関係の監視・無視して口をきかないなどの精神的嫌がらせ、自分や家族に危害を加えられるのではないかという心理的攻撃、生活費を渡さない、外で働くことを制限する経済的圧迫、嫌がっているのに性的行為を強要する性的強要も含まれます。
多くの例で、夫は自分を正当化しており、妻は自分が悪かったのだと、夫をかばい、自分を責める傾向が見られますが、これらの暴力は犯罪であり重大な人権侵害です。被害にあったときは、一人で悩んだり我慢したりせず、警察や弁護士にご相談ください。
ご相談事例
- 離婚することになりましたが、夫は私が専業主婦であったことから、稼いでいない私には一切財産を渡さないといっています。夫は全く家事をせず、子どもの世話もほとんど私がやりました。私の努力は評価されないのでしょうか?
- 夫と同居していますが、夫から私や子供が暴力・暴言・虐待を受けています。どうしたらよいか分かりません。
- 夫と別居したいのですが、経済的に自立できるか不安です。何か方法はあるでしょうか。
- 夫からDVを受けており、我慢できず別居するつもりです。ただ、夫は私や子に執着しており、別居後に私の別居先に押し掛けられるかと思い、怖くてたまりません。
- 夫の暴力と浮気が原因で、離婚調停を申し立てたいのですが、裁判所で夫の顔を見たくありませんし怖いです。
- 養育している子を保育園に預けて働いています。ところが、別居中の夫が保育園に来たり、私に子を返せと言ってきます。どうしたらよいでしょうか。
- 離婚の協議中ですが、夫が財産分与や年金分割に応じてくれません。話し合い以外の請求方法はありますか?
- 夫のDVが怖くて、別居先の住所を知らせたくありません。別居先を知らせずに手続きをすることは可能でしょうか。
- 離婚した夫から執拗に子どもとの面会を求める電話がかかってきます。二度と会わせたくないのですが、それは可能でしょうか?親権者は私です。
- 養育費を決めて、離婚しましたが夫が養育費を払いません。養育費を払ってもらう方法があるのでしょうか。
- 3年前に妻と離婚し子どもは妻が引き取りました。その後、元妻は別の男性と再婚しました。それでも私が引き続き養育費を支払う必要があるのでしょうか。
離婚問題の気になるトピック
慰謝料がもらえる条件と慰謝料の相場とは
離婚に伴う慰謝料とは、婚姻生活において相手の言動によって負った精神的な苦痛やあるいは離婚を余儀なくされたこと自体によって受けた苦痛について、その原因を作った相手に請求する損害賠償金のことをいいます。
なんとなく性格が合わなくて離婚したという理由だけでは法律上慰謝料の請求は認められていません。慰謝料が発生する条件を簡単に言えば、「相手の○○のせいで離婚に至った」というように相手に有責性がある場合です。例えば、相手の浮気・暴力・虐待などが典型例になります。
一方、どちらかのみに責任があるとは言えない性格の不一致、価値観の相違など、どちらにも離婚の原因がある場合は、慰謝料請求は認められません。
「相手の○○のせいで離婚」になると思ったら、その証拠を集めて残しておくことが大切です。浮気であれば、相手との会話を録音する、メールの写真を撮るなどです。暴力であれば警察を呼ぶ、医師の診断書をもらうといったことです。実際の裁判では、証拠がものを言うからです。
裁判をせずに離婚した場合は、2人の間で合意ができればいくらでもかまいません。もっとも、裁判の場合は、離婚の有責性の程度、背信性の程度、精神的苦痛の程度、婚姻期間、未成熟子の存在、離婚後の要扶養などを総合的に考慮して、裁判官が決めるので、相場を提示するのは難しいのです。
ちなみに、東京家庭裁判所の統計では、平成16年4月から平成19年3月までの間の離婚等事件において、慰謝料等が認められた事件のうち、500万円以下が94.3%(うち100万円以下は26.8%)に上っています。
ただ、相談内容や証拠などの精査によって、一定の額は推認できるかと思います。慰謝料についてお困りの方、まずはご相談ください。
