高齢者とは65歳以上の人を言うのが一般的ですが、その数は全国で約3,600万人(2022年9月現在の統計)です。長い人生の中では様々な問題が生じますし、今後の人生にも悩みはつきものです。
今は自分で全ての管理をしているけれど、段々億劫になってきた、あるいは、一人暮らしで身近に頼れる家族がいない。施設に入所した後は、誰が面倒をみてくれるのだろう…。認知症になって判断能力が低下したらどうしたらいいのか?それらに備える老後の生活設計としては成年後見制度(法定後見、任意後見)があります。
「お世話になったあの人に財産をあげたい」「障がいを持つ子どもに家を残したい」「NPOに寄付したい」などの希望がある方もおられるでしょう。相続人は誰になるのか、遺言を作成したほうがいいのか…相続・遺言の問題も特に高齢者にとって重要な問題です。
また、アパート経営をしていて財産関係が複雑、あるいは、一人暮らしで近くに頼れる親族がおらず、入院した場合の財産管理が心配といった場合には、弁護士に財産管理を依頼することもできます。
2006年4月から高齢者虐待防止法が施行されていますが、同居家族や施設での高齢者虐待は、なかなか表面化しにくく、今も深刻な問題です。その人を巡る人間関係や財産関係、過去から現在までの家族関係、今後の生活の希望、などの複雑な要因がからみあい、解決に困難を要する場合も多いものです。弁護士は、場面に応じて、行政や福祉関係者などとも連携し、問題解決にあたります。
また、高齢者の消費者被害はなかなかなくなりません。一人暮らしも含め、高齢者のみの世帯も増加しており、親切そうに近づいて、高齢者を食い物にする悪徳業者はなかなか跡を絶ちません。しかし消費者被害を救済する法制度もいろいろとあります。
<高齢者問題に関する主な業務>
・高齢者の権利保護
例えば、高齢者虐待や差別、相続問題など、高齢者の法的権利に関わる問題は身近に多く存在します。これらの問題に対して弁護士は、適切な法的手段を用いて、高齢者の利益保護を行います。
・成年後見業務
成年後見とは、判断能力に制約があり、ひとりで物事を決めることに不安や心配のある高齢者等を守るための法的な制度です。ご本人の意思を尊重しつつ、財産管理や日常生活のサポート等の身上保護を行います。弁護士が後見人として指定されることもあります。こちらもご覧ください —>成年後見人
・高齢者福祉や介護の問題への対応
介護サービスの契約やトラブル、施設の入所や退所に関する法的な支援を行います。高齢者が適切なサービスや施設を受けられるように助言や代理人業務を提供します。
・遺産相続の問題への対応
適切な相続手続きのサポートや遺産分割のアドバイスなどを行います。高齢者の意思を尊重しながら、遺産問題を解決するための支援をします。
・高齢者の法的相談とアドバイス
高齢者が直面する法的問題や権利についての疑問や懸念に対して、解決策や法的手続きについて説明しサポートいたします。
ご相談事例
- 久しぶりに母の家に行くと、母が使うはずもない商品が山積みにされて口座から引き落とされていました。詐欺ではないかと思うのですが。
- 父親は認知症なのですが、少し前に未公開株に投資していたようです。取り戻すことはできますか?
- ひとり暮らしをしている82歳です。ひとり暮らしが難しくなったら、有料老人ホームに入ろうと思っていますが、その場合、預金通帳の保管や費用の支払などはどうすれば良いのでしょうか。
高齢者問題に関するトピック
高齢者の虐待について
近年、高齢者に対する虐待に関するトラブルも増えています。虐待は、身体的なものだけではありません。虐待は5つに分類されています。具体的な例としては以下のとりです。
・身体的虐待
高齢者の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること。例えば、殴る・蹴る・つねる・押さえつけらる、あるいは、ベッドに縛り付ける、意図的に薬を過剰に服用させるなど。
・心理的虐待
高齢者に対する著しい暴言または著しく拒絶的な対応その他高齢者に対する著しい心理的な外傷を与える言動を行うこと。例えば言葉による暴力(侮辱・罵る・悪口)、排泄の失敗を嘲笑しそれを人前で話して恥をかかせる、意図的に無視するなど。
・性的虐待
高齢者にわいせつな行為をすること、または高齢者にわいせつな行為をさせること。例えば、排せつの失敗に対する罰として下半身を裸にして放置すること、キス・性器への接触など。
・介護・世話の放棄・放任
高齢者を衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、養護者以外の同居人による虐待行為の放置など、養護を著しく怠ること。例えば、入浴せず異臭がする・髪が伸び放題、水分や食事を十分に与えられていないことで空腹状態が長時間にわたって続くあるいは脱水症状や栄養失調の状態にある、室内にごみを放置するなど劣悪な住環境の中で生活させる、必要な介護・医療サービスを相応の理由なく使わせないなど。
・経済的虐待
養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。例えば、日常生活に必要な金銭を渡さないあるいは使わせない、本人の自宅等を本人に無断で売却する、年金や預貯金を本人の意思、利益に反して使用するなど。
これらに対して、弁護士は、虐待防止のための助言・指導を行う、虐待者である養護者あるいは施設等に対して是正申入れ・交渉を行う、行政機関へ報告し指導を促す事案によっては、調停・仮処分・訴訟等の裁判手続きを行うなどして、サポートします。
